虐待、いじめ、DV、殺人、自殺、痛ましいニュースが後を絶ちません。ニュースにはならない日常の中にも、たくさんの苦しみが潜んでいます。なぜ?
人を平気で傷つける、心ない人間の正体とは?自身を死に追いやるほどの苦しみとは?
いろいろなケースがあるとは思います。ですが、その答えの多くは、子どもの心が育っていく中に、ある気がしてなりません。悲しい、不可解な、心ない事件や出来事の多くは、傷ついた子どもの心がケアされることなく、社会に放り出された結果、起こってしまっているような気がしてなりません。
私たちは「心」について知らなすぎます。特に子どもの「心」について、大人は、社会は、無関心すぎます。家庭や学校の中で、蔑ろにされ、抑圧され続けている子ども達がいることに、目を瞑ってはいけないと思います。
虐待とは解りにくい虐待を受けて育ち、精神疾患に陥り、そこから立ち直った、ある女性の半生を辿ってみると、いろいろなことが見えてきます。偏見や差別から身を守るために、加害者のプライバシーを守るために、飲み込み続けたその痛みを、フィクションという形で漫画にしてみては?漫画なら、心の中のことを視覚化することができる。重い現実を、和らげて表現することができる。常識とは異質な世界でもがく人間の心を、多くの人に知っていただけるのでは。また、渦中にいる人へは、その苦しみから抜け出すヒントを手渡すことができるかもしれない。
そんな思いに衝き動かされ、私はペンを取りました。私たちには、社会には、できることがあるはずです。この本が、その小さな一つの力となれたなら幸いです。
本山理咲 まえがきより